こんばんは、オヤジです。
前回の記事では、世界遺産の街「公州」への行き方をご紹介しました。
今回は視点を変え、かつて「百済」の王都として栄え、日本とも驚くほど深い縁を持つ公州の魅力に迫ります。
本記事では、ユネスコ世界遺産に登録された背景となる公州の歴史をひもときながら、訪れたら絶対に外せない観光スポットを余すところなくご紹介します。
世界遺産・百済歴史地区について
2015年にユネスコ世界遺産に登録された「百済歴史地区」は、「公州(コンジュ)」、「扶余(プヨ)」、「益山(イクサン)」の3都市にまたがる8つの遺跡群です。
475年から660年にかけての百済後期の歴史を象徴しており、中国の都市計画や建築技術、仏教などを取り入れ、それらを独自に洗練させ、日本を含む古代東アジア諸国へ伝播させた「文化交流の中心」としての価値が高く評価されています。
優美な石塔が残る寺院跡や堅牢な城郭、王室の古墳群は、当時の華やかな文化と高度な技術力を今に伝えており、古代東アジアの歴史ロマンを感じられる貴重な場所です。
構成資産は以下のとおりです。
【公州】
- 公山城(コンサンソン):錦江沿いに築かれた天然の要塞
- 宋山里(ソンサンリ)古墳群:武寧王陵を含む王室の墓域
【扶余】
- 官北里(クァンブクリ)遺跡 と 扶蘇山城(プソサンソン):王宮跡と背後の防御施設
- 定林寺址(チョンニムサジ):百済を代表する五重石塔が残る寺院跡
- 陵山里(ヌンサンリ)古墳群:城壁の外に位置する王室の墓域
- 羅城(ナソン):首都を守るために築かれた外郭城壁
【益山】
- 王宮里(ワングンリ)遺跡:百済後期の王宮跡とされる遺跡
- 弥勒寺址(ミルクサジ):東アジア最大級の規模を誇った寺院跡
日本と深いつながりを持つ公州の歴史
公州は475年から538年までの64年間、「百済(くだら、ペクチェ)」の王都「熊津(ウンジン)」として栄えた都です。

百済と言えば、世界史のみならず日本史の授業でも習うため、馴染みのある方も多いと思います。4世紀から7世紀までの朝鮮の三国時代に栄えた国です。
百済の最初の首都は「漢城(現在のソウル)」でしたが、高句麗の攻撃により陥落し、一時的に滅亡しました。その後首都を移し復興した場所が現在の公州なんです。

その中心人物が、百済第25代王である「武寧王(ぶねいおう、ムリョンワン)」です。
武寧王は日本とのつながりが深く、「日本書紀」には、武寧王が佐賀県の加唐島(かからしま)で生まれたという記録が残っています。
さらに新しいところでは、2001年に当時の天皇陛下(現在の上皇陛下)が「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫である」という「続日本紀」の記述に触れられ、日本と百済のゆかりについて語られたことが大きな話題となりました。
また、武寧王の墓から見つかった木棺には、日本にしか自生しない「コウヤマキ」が使われています。これは、1500年以上も昔から、海を越えて人や物が活発に行き来していたことを証明する動かぬ証拠と言えるでしょう。
公山城:王都を守った鉄壁の要塞
ここからは、公州を訪れたら必ず足を運びたいスポットをご紹介します。まずは、街のシンボルでもある「公山城(コンサンソン)」です。
公山城の基本情報
公山城は有料ですので、チケット売り場で入場券を購入してください。

チケット売り場はゲートから入り、左手の方向にあります。案内所が隣接していますので、そちらでパンフレットを貰うことができます。
パンフレットには見どころと散策コースが紹介されていますので、ぜひ入手してください。一番長いコースで1時間になっていますが、実際には2時間ほどかかりました。
また、お手洗いも案内所の更に奥にあります。
- 基本情報
| 住所 | 280 Ungjin-ro, Ungjin-dong, Gongju-si, Chungcheongnam-do |
| 電話番号 | +82418567700 |
| 営業時間 | 9:00-18:00 |
| 入場料 | 3,000ウォン(約330円) |
公山城の見どころ
錦江(クムガン)という大きな川に隣接する山に築かれたこの城は、かつて百済の王宮を守るための鉄壁の要塞でした。

現在は周囲約2,660mの城壁に沿って散策路が整備されており、実際にその上を歩くことができます。
元々は土で作られた「土城」でしたが、後の李氏朝鮮時代に現在のような立派な「石城」へと改築されました。

散策路は手すりがありません。落ちると助からないような場所もいくつかありましたので、ご注意ください。

城壁の上から見渡す景色はまさに絶景です。眼下を悠々と流れる錦江の輝きは、いつまでも眺めていたくなるほどの美しさです。
公山城は夜間はライトアップされ、昼間とはまた違った、幻想的な雰囲気を楽しむことができます。
武寧王陵と王陵園:1500年の眠りから覚めた奇跡
次に向かったのは、百済の王や王族が眠る聖地、「武寧王陵と王陵園(宋山里古墳群)」です。ここは、考古学史上「奇跡」とも呼ばれる発見があった場所として知られています。

武寧王陵と王陵園の基本情報
武寧王陵と王陵園も有料です。

チケット売り場は駐車場から少し離れています。手前には、後述する武寧王陵から出土した「鎮墓獣(ちんぼじゅう)」のミニチュアがあります。
有料エリア内にはトイレが一箇所しかありませんので、入場前に駐車場にあるトイレをご利用ください。
- 基本情報
| 住所 | 35 Wangneung-ro, Gongju-si, Chungcheongnam-do |
| 電話番号 | +82418563151 |
| 営業時間 | 9:00-18:00 |
| 入場料 | 3,000ウォン(330円) |
武寧王陵と王陵園の見どころ
1971年、排水路の工事中に偶然発見された武寧王陵は、東アジアの王陵の中で唯一、一度も盗掘されずに完全な状態で発掘された極めて稀な墓でした。

墓誌によって被葬者と没年(523年)が判明したことは、歴史的な大発見でした。
なぜなら、年代が確定しているこの遺跡と比較することで、他の遺跡や出土品の年代も特定できるようになるからです。
まさに、東アジア古代史研究の「ベース(基準)」となる重要な遺跡です。


現在、文化財保護のために実物の墓内部へ入ることはできませんが、隣接する展示館では内部が精巧に再現されています。

美しいレンガ造りの構造や、当時の美意識が詰まった空間をぜひ体感してください。
百済の至宝が集結!国立公州博物館
「国立公州博物館」の最大の見どころは、何と言っても武寧王陵から出土した膨大な数の至宝です。
王陵自体は現在、保存のために内部に入ることができませんが、そこから発掘された金製の冠飾りやアクセサリー、王の魂を守るユーモラスな表情の鎮墓獣などの「本物の遺物」は、すべてこの博物館に収蔵・展示されています。
その多くが国宝に指定されており、1500年前のものとは思えない精巧さと洗練された美しさは圧巻の一言です。
館内は現代的で非常に見やすく整備されており、百済の人々の高い美意識と技術力を存分に堪能できます。
- 基本情報
| 住所 | 34 Gwangwangdanji-gil, Gongju-si, Chungcheongnam-do |
| 電話番号 | +82418506300 |
| 営業時間 | 9:00-18:00 |
| 休館日 | 月曜日 |
| WEBサイト | https://gongju.museum.go.kr/jpn/index.do |
| 入場料 | 無料 |
伝統と現代が調和する癒やしの空間、公州韓屋村
「公州韓屋村」は、韓国伝統の建築美を現代の技術で再現した、趣のある文化空間です。

整然と並ぶ瓦屋根や土壁、静かな路地は、百済の古都・公州ならではの情緒を漂わせており、散策や記念撮影に最適なスポットとして人気を集めています。
敷地内は誰でも自由に散策することができ、公州名物の栗を使った料理が楽しめる食堂や、伝統工芸の体験施設、コンビニなども充実しています。歴史の息吹を感じながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるでしょう。
また、この韓屋村は宿泊施設としても運営されています。伝統的なオンドル(床暖房)を備えた客室で、韓国の昔ながらの暮らしを体験しながら一晩を過ごすことも可能です。
観光の合間の散策スポットとしても、旅の滞在先としても楽しめる場所です。
- 基本情報
| 住所 | 12 Gwangwangdanji-gil, 웅진동 Gongju-si, Chungcheongnam-do |
| 電話番号 | +82418812828 |
| 営業時間 | 9:00-18:00 |
おすすめの回り方と注意点
今回ご紹介したスポットは、徒歩でも回れますが、全て徒歩で回ると結構な距離があります。
バスは通っているようですが、走行しているところを一度も見かけませんでしたので、公共交通機関はあまり当てになりません。
その上、k-ride(カカオタクシー)でタクシーを手配しようとしましたが、5回試み、一度も成功せず、最終的に全て徒歩で回りました。
以上のような経験から、今回ご紹介したスポットをすべて効率的に回るためには、公州総合バスターミナルから国立公州博物館に移動し、徒歩で観光しながら公山城まで行き、公山城から公州総合バスターミナルまでタクシーで戻るというルートがおすすめです。
公山城周辺は比較的タクシーを捕まえやすいです。
- 公州総合バスターミナル
タクシー移動
- 国立公州博物館
徒歩移動
- 公州韓屋村
徒歩移動
- 武寧王陵と王陵園
徒歩移動
- 公山城
タクシー移動
- 公州総合バスターミナル
私は公州に4時間半ほど滞在しましたが、少し時間が足りませんでした。じっくりと観光する場合は、6時間くらいは必要です。
その他の注意点としては、食事を取れるところが、公州総合バスターミナル、公州韓屋村、公山城の周りに限られています。
また、結構な距離を歩きますので水分は必須ですが、コンビニもあまり多くありませんので、ドリンクはバスターミナルか公山城周辺で購入しておいてください。
まとめ
公州は派手さこそありませんが、とても落ち着く魅力的な街です。
公山城からの眺めや、日本とゆかりのある武寧王陵を見ると、静かですが深い感動があります。
教科書で習っただけの百済が身近に感じられるので、ぜひ現地を訪れ、百済の歴史と公州の空気感を肌で感じてみてください。


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